帯広第一病院

内視鏡センターのご案内


胆膵内視鏡(ERCP)

 内視鏡的逆行性胆管膵管造影法(ERCP)とは、胆管及び膵管の出口(ファーター乳頭といいます)から細いプラスチック製のチューブ(カニューレといいます)を胆管、もしくは膵管に差し込んで造影剤を注入し、胆管や膵管の形を見る検査です。1980年代より行われている検査法ですが、技術が進んでMRIでも胆管膵管が見られるようになった現在においても、微細な形の違いを検出するには一番の検査です。

 レンズが内視鏡の横についているスコープ(正確には後方斜視5°)を、食道から胃へ、そして十二指腸へ進めます。もちろん先が見えないので、感覚と壁の色調などを参考にしながら慎重に進めます。十二指腸に入ったらスコープのたわみをとるように少し引くとスコープ全体が十二指腸の下降部へ進みます。その時、後方斜視鏡だとファーター乳頭が正面やや視野の上方に見えてきます。その後スコープを微調整して、視野の右横から出てくるプラスチック製チューブ(造影カニューレ)をファーター乳頭に接近させ、スコープ操作とカニューレの操作で胆管にカニューレを入れていきます。

 胆管深部にカニューレが入る(深部胆管挿管)と初めて、色々な処置ができる状態になります。しっかり胆管を造影したり、ガイドワイアと呼ばれる細いワイアを胆管内に留置してその後の処置を進めることになります。もちろん、膵管に対してもガイドワイアを挿入することもあり、患者様の状態に合わせて治療法を選択することになります。

 当センターではERCP関連手技にも積極的に力を入れております。当センターで施行されるERCPのうち、90%超は治療を目的としたERCPです。治療を目的としたERCPでは、さまざまなERCP関連手技が施行されており、本稿で解説したいと思います。

 まずは、胆管深部にカニューレを挿管(ディープカニュレーション)しておき、ガイドワイア(数社のものがあります)を胆管深部に留置します。そのうえで、各処置を行います。当センターで施行しているERCP関連手技は、EST, EPST, プレカット, EPBD, ENBD, ENGBD, EBD, ENPD, EMS, EPS, 砕石術、載石術,POCS等があります。その手技を症例それぞれに対して使い分けながら、適切な処置を施行していきます。以下に概略をご説明いたします。

EST
 内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST):胆管にガイドワイアを留置し乳頭括約筋を切って、胆管口を広げる処置です。括約筋及び口側隆起をいくら切るかにより、大、中、小切開の3種類に分かれます。小切開は却って術後の乳頭浮腫により膵炎を起こしやすいとされており、通常はOddi括約筋を切除する中切開を行うことが多いです。深部胆管挿管の後ガイドワイアを留置し、ガイドワイアに沿ってパピロトミーナイフ(やパピロトームなどと呼ばれます。当科ではオリンパスのクレバーカットを主に使用しています)を胆管に挿入し、ナイフで乳頭を正面やや左(11時方向)に向かって切除していきます。胆管結石等の除去をする際には第一選択の処置になります。しかし、一度ESTをしてしまうと括約筋の機能が永久的に失われるため、胆管への腸液の逆流が起こり、直接ビリルビンが間接ビリルビンへ変化し、再度の結石の原因となる場合があります。そのため、適応については年齢等を考慮に入れます。
EPST
 内視鏡的膵乳頭括約筋切開術(EPST):慢性膵炎に伴って起こる膵石などにより、膵管の閉塞が起きていると考えられるときに施行します。膵管にガイドワイアを留置して、Vater乳頭の膵管口を切開します。膵管口の場合は直接膵臓を切るため、必要最小限の切開にとどめます。膵炎等を起こす可能性があり、後ほど出てくるENPDやEPSが必須となっております。
プレカット
 プレカット:各種カニュレーション法によっても選択的胆管挿入が困難な場合に施行します。Vater乳頭開口部より口側隆起を針状ナイフを使って切除していき、胆管口と膵管口が露出した時点で胆管にガイドワイアを留置し、深部胆管挿管の状態にする方法です。
EPBD
 内視鏡的乳頭バルーン拡張法(EPBD):深部胆管挿管が得られた後、ガイドワイアを留置し、バルーン(当センターではBoston社のHurricaneを使用します)を用いて乳頭を拡張させます。Oddi括約筋の永続的な破壊がないため、Vater乳頭の機能が温存されます。その後各種操作を行います。しかし、膵管口を圧迫するため膵炎になる危険性が大きく、膵炎予防の観点から先に膵管へガイドワイアを留置しておいてEPBDを施行し、手技の最後に自然脱落型の膵管ステントを留置するのが望ましいと考えます。
ENBD
 内視鏡的経鼻胆管ドレナージ術(ENBD):胆管深部挿管が得られた後、必要に応じて(減黄や胆砂の除去等)胆管内へドレナージチューブを留置します。そのドレナージチューブを鼻から出して感染胆汁や濃縮胆汁を体外に排出します。利点は後から簡単にチューブを用いて造影することできれいな胆管像を得られること、胆汁の採取が容易なので細胞診がしやすいこと、食事によってもチューブの閉塞がないことなどがあげられます。一方、鼻からチューブが出ることから咽頭不快感がぬぐえないこと、鎮静後の回復期に自己抜去が多発することなどが欠点となります。また、胆汁の腸管からの吸収が極度に低下するため、肝予備能が低下する場合があります。その後に膵頭十二指腸切除術等の侵襲の大きな手術が控えている場合は、排出された胆汁を飲んでいただく場合もございます。
ENGBD
 内視鏡的経鼻胆嚢ドレナージ術(ENGBD):胆管深部挿管が得られた後に胆嚢管を同定し、造影チューブと柔らかいガイドワイアで胆嚢管を進んで胆嚢内へ造影チューブを進め、その後硬いガイドワイアに交換して胆嚢内へドレナージチューブを留置します。胆嚢管が胆砂や炎症で閉塞している場合に、胆嚢内部の感染胆汁を除去する方法として最近施行される例が増えています。胆嚢管が閉塞した胆嚢炎の場合は、経皮経管胆嚢ドレナージ術(PTGBD)を行っていましたが、胆嚢の緊満が解消するとチューブの逸脱が起こることや、穿刺部位から胆汁が漏れることで胆汁性腹膜炎を起こすことがあります。ENGBDでは本来ある管腔を用いて胆嚢内部の感染胆汁を排出できるので、感染胆汁を腹腔内に漏らす心配がないといえます。また、胆嚢癌の場合には胆嚢穿刺を行うことで腹腔内への播種を起こすこともあり、その点からもENGBDによるドレナージが有効となりえます。しかし、胆嚢内への挿管率がそう高くはなく、さらに胆嚢管が閉塞している場合、炎症が強い場合などは、胆嚢管の強度が弱くなっており、穿孔する危険も高いです。必ずしも全例が成功する訳ではないのが欠点です。
EBD
 内視鏡的胆管ドレナージ術(EBD):深部胆管挿管を得られた後にガイドワイアを留置し、その後必要に応じて胆管内へプラスチック製ステントを留置します。一方の開口部は十二指腸内にあり、胆汁がプラスチック製のチューブを伝って十二指腸に排出されます。胆管内にチューブが存在するので、チューブの違和感がありません。しかし、胆汁の性状を確認できない、減黄の度合いが確認できない、細胞診の検体が得られない、抜去する際は再度スコープを十二指腸まで挿入しないといけない、食物残渣や感染胆汁ですぐ閉塞する等の弊害があり、急性期の減黄目的の胆管ドレナージとしては不適当であると考えております。胆管癌等、長期にわたる減黄に対して留置することが多いです。
ENPD
 内視鏡的経鼻膵管ドレナージ術(ENPD):膵管深部挿管が得られた後に膵管にガイドワイアを留置し、膵管にプラスチック製のドレナージチューブを留置してきます。膵内結石の症例や膵癌を疑う症例等に用います。膵内結石を載石した後に砂状のものが膵管内に残ることがあり、それによって膵管が閉塞して急性膵炎を引き起こす可能性があります。また、膵癌を疑う症例では膵液細胞診で膵癌細胞が検出されることもあります。
EMS
 内視鏡的メタリックステント挿入術(EMS):胆管の悪性閉塞(膵癌、胆管癌による胆管閉塞)に対して、メタリックステントと呼ばれる、自己拡張型の金属のメッシュを挿入し、展開させることで閉塞を解除する方法です。EBDの平均開存期間はおよそ1~2カ月とされていますが、EMSの場合は平均で1年前後とされております。金属製のメッシュの外側に腫瘍の管腔内進展を予防する膜が張ってあるタイプと、張っていないタイプがあります。膜が張ってあるタイプの方が腫瘍のステント内への進展に対して有利であり、膵癌による胆管の壁外圧迫に対してカバー付きのメタリックステントを挿入し、肝門部胆管癌のように複雑に入り組んでいる胆管に対して癌による狭窄が起きている場合は、カバーの付いていないメタリックステントを挿入いたします。良性疾患の場合は、メタリックステントに肉芽組織がついて抜去できなくなる恐れが高く、使用いたしません。
EPS
 内視鏡的膵管ステント留置術(EPS):おもにERCPの合併症で問題となる急性膵炎の予防目的で施行します。深部膵管挿管が得られた後ガイドワイアを留置しておき、プラスチック製のステントを挿入します。膵管の場合は、チューブが食物残差で閉塞した場合に激烈な膵炎を起こします。また、チューブの径が細いため余計に閉塞しやすく、平均で2~3週間でステント閉塞をきたすため、2週間以内に抜去する必要があります。最近は片フラップ式や、片ループ式と言ったチューブが開発され、チューブの迷入を避けるために片方向にフラップやループがついています。膵管が炎症を起こして腫れている場合は膵管が細くなるためチューブが維持されますが、炎症が治まった場合にはチューブを止めておくフラップ類が膵管内にはありませんので勝手に脱落します。そのため、自然脱落型膵管ステント、などとも呼ばれます。これだけでも術後の膵炎の発症は大きく減少しており、膵炎予防には画期的な方法です。
砕石、載石
 砕石、載石術:総胆管結石症の症例に対して、ESTやEPBD等で胆管入口部を拡張しておいてから施行します。砕石は、特殊な砕石用のバスケット鉗子を用いて、石を胆管内で砕きます。その後8線のワイアで作られたフラワーバスケット鉗子や、バルーンで胆管内を掃除します。最後にENBDを留置して、とりきれなかった破片を回収いたします。
POCS、POPS
 経口胆管鏡、膵管鏡(POCS,POPS):ERCPのスコープの鉗子チャンネルの中を通る、極細の胆管鏡を用いて胆管を観察します。胆管癌のうち、乳頭状の外観を呈する乳頭腺癌については、粘膜表層を水平方向に這って浸潤していくことが知られております(表層進展)。そのため、癌の肝側への浸潤がどれくらいあるかの評価が、手術の成否を握ります。子スコープの中を極細の生検鉗子を通すことができるので、粘膜表層の進展度を肉眼、色素のみならず、組織学的にも診断することができます。

 以上の手技を用いて、症例ごとに最適な処置をしております。さらに特殊な検査については、必要があれば機器を借用して施行することにしています。最近ではスコープや治療機器がかなり改良されてきていることもあり、経乳頭的アプローチは以前に比較いたしますと非常にやりやすくなっております。また、PTBD等の経肝的アプローチに比べて低侵襲であること、また生理的であることから積極的に経乳頭的な処置を行っております。胆膵領域の炎症では、特に胆嚢炎、胆管炎は発症後まもなく敗血症に陥る病態の一つであり、発病当初に適切なドレナージができていれば問題なく手術へと持っていけることがほとんどですが、ひとまずトラブルを起こしますと生死にかかわる病態となり得ます。胆嚢炎、胆管炎については、可及的全例に超音波内視鏡と腹部CT検査にて悪性疾患を除外しつつ、ドレナージの方法を検討していきたいと思っております。高齢者の胆嚢炎では、手術のリスク等も考慮に入れると、経鼻胆嚢ドレナージ術(ENGBD)も選択枝の一つとなっております。また、膵癌、胆管癌等に起因する悪性胆道狭窄に対するメタリックステントの施行、あるいは交換等についても随時実施しております。